ヨセミテの気候



渓谷のWilderness Centerの掲示

■概況
 ヨセミテの気候は比較的温和だが、4月から10月にかけては日中あたたかく夜は冷える。冬も比較的温和で平均最高気温はヨセミテ渓谷内(海抜約1,200m)で摂氏5度〜10度。もちろん標高による影響は大きいので海抜600mから4,000mまで、ヨセミテ国立公園内はおどろくべき気候のバリエーションがある。
 年間降水量は約1000mm。そのほとんどが12月から3月にかけて降る。11月にはたいてい初雪が降り、渓谷での積雪は平均74センチだが、60センチを超えることはまれ。海抜2,100mのバジャーパスではたっぷりの雪でダウンヒルスキーを楽しむことができ、またクロスカントリースキーも公園の高地部でよく楽しまれている。
 春、暖かくなると川の流水量が増え、そして激動する滝をつくりだす。しかし夏の渇水期になると多くの滝が枯れてしまう。
■服装は
 夏のヨセミテ渓谷内の滞在であっても、朝夕は10度近くにまで下がるということをお忘れなく。セーターやジャケットを1着入れておこう。
■ハイカントリーの気候
 夏期にはクルマでタイオガ・ロードを通り、2時間ほどでツォロミーメドウズやタイオガ峠まで比較的容易にアプローチできる。しかしここはヨセミテ渓谷から1,500m以上も高所であることを忘れてはならない。
 一般に高度100mで0.6度気温が下がるといわれており、単純にこれを当てはめると9度近く気温差があると思っていただいて良い。つまり8月であっても最高気温23度、最低気温1度ということになる。私も8月ツォロミーメドウズのキャンプでは昼間はTシャツ・短パン姿だが早朝はダウンやフリースのジャケットを着用した。
■ヨセミテにはどの時期に行くのがいいか
 ヨセミテは四季を通じて楽しめるため、一概にいつがいいかは言えない。ただし夏期のみ、あるいは春〜秋のみオープンする道路、プログラム、施設も多いため、国立公園の全容を知ろうと思えば夏シーズンに行く必要があるだろう。
 一方で厳冬期の静けさ、氷と雪のヴェールの包まれた姿も神秘的だ。

  • 6月中旬〜
    夏期シーズンの始まり。ビジターセンター、レンジャープログラムの規模が最大限にオープンする。学校も夏休みになり、こども向けのプログラムも始まる。滝の水量もこのころピークである。
    冬の積雪量によるが、ハイカントリーへのルート「タイオガ・ロード」もオープンし、ハイカントリーにあるキャンプ場も営業を開始。(雪の多い年はオープンが7月にまでずれ込んむこともある。)
  • 7月中旬〜8月
    ビジターも最盛期。渓谷は大混雑。日中の気温はかなり上がる。小さな滝は水量が減り、徐々に枯れてくる。
    草原ではさまざまな種類の花々が咲き乱れる。
  • 9月上旬〜
    Labor Day(9月第1土曜)を境に公園は秋シーズンに入る。レンジャープログラムの規模は縮小。こども向けのプログラムはなくなる。渓谷の滝の水量もかなり減り、年によってはヨセミテ滝も9月上旬に枯れてしまうこともある。
  • 10月
    ハイカントリーのキャンプ場は営業終了。レンジャープログラムもかなり規模縮小。
    しだいに紅葉の時期。10月中旬にハーフドーム頂上にアプローチするワイヤーケーブルが取り外される。
  • 11月中旬〜
    冬シーズンに入る。初雪もこのころ。カリービレッジにはスケートリンクができる。(3月まで)
  • 12月〜3月
    本格的な積雪期。道路も閉鎖区間が多く行動範囲はかなり限定される。
    クロスカントリースキーが楽しめる。バジャーパスにはダウンヒルスキー場もオープン。この時期のヨセミテ渓谷は静かで美しい。
  • 4月〜5月
    春のシーズン入り。バジャーパスのスキー場の営業終了。徐々に道路もオープン。レンジャープログラムも少しづつ規模拡大。
    5月上旬にはヨセミテ渓谷内のDogwood(アメリカハナミズキ)が開花。
    5月中旬にハーフドーム頂上にアプローチするワイヤーケーブルが設置される。




ヨセミテ渓谷の気象データ

1月

4月

7月

10月

日照時間

3:57

7:38

9:34

6:45

晴天の日の割合

39%

70%

97%

81%

午後の気温(摂氏)

9

19

32

24

相対湿度

86%

69%

50%

64%

乾燥した日の割合

74%

80%

97%

94%

月間降水量(mm)

173

84

10

38

月間降雪量(cm)

64.5

11.4

—-

0.5



ヨセミテ渓谷(海抜1220m)の平均降水量と気温

降水量
(mm)

最高気温
(摂氏)

最低気温
(摂氏)

1月

161

8

-4

2月

168

13

-3

3月

149

14

-1

4月

84

18

1

5月

38

22

4

6月

13

27

8

7月

7

32

10

8月

2

32

10

9月

14

28

9

10月

43

22

4

11月

89

14

-1

12月

180

9

-3


(Yosemite Associationの資料による)

近代ヨセミテ年表

  • 1833     ヨセミテ渓谷に白人が初めて到達。シエラネバダ山脈を横断したJoseph Walkerのチームが「人間には超えられない1マイルを超える絶壁」に遭遇。
  • 1851     服従しないインディアンを追うべくJames Savage少佐の命令をうけたマリポサ大隊がはじめてヨセミテ渓谷に入る。
  • 1852     マリポサグローブのジャイアントセコイア群が鉱山試掘者によって発見される。
  • 1855     最初の旅行者がJames Mason Hutchingsをガイドとしてヨセミテ渓谷にやってくる。一行のなかにはThomas Ayresという画家がおり、最初のヨセミテ渓谷のスケッチを描いた。
  • 1856     センティネル・ロックの麓に「The Lower Hotel」がヨセミテ最初の建造物として建てられる。またヨセミテ渓谷への最初のトレイルがMilton & Houston Mann兄弟によって完成した。
  • 1859     C.L.Weedによってヨセミテ渓谷の最初の写真が撮影される。
  • 1864     ヨセミテ渓谷とマリポサグローブのジャイアントセコイア群が世界最初の州立自然公園として指定される。Florence Hutchingsがヨセミテ渓谷で最初の赤ちゃんとして誕生する。
  • 1866     Galen Clarkが最初の「ヨセミテの守護者」と名付けられる。
  • 1868     John Muirのヨセミテへ初めての旅。
  • 1871     8月29日、J.B.Tilestonがヨセミテの最高峰Mt.Lyellに登頂成功。
  • 1874     ヨセミテ渓谷への最初の道路the Coulterville Roadが完成、1ヶ月後にはthe Big Oak Flat Roadが完成。
  • 1875     George Andersonが初めてHalf Domeに登頂成功。最初の公立学校がヨセミテ渓谷に開校。
  • 1876     John Muirが書いた野放図な羊の放牧を警告する新聞記事が掲載される。
  • 1878     A.Harrisにより最初に公営のキャンプ場がヨセミテ渓谷にオープン。現在のアワニーホテルの近く。
  • 1890     ヨセミテが国立公園に指定される。しかしヨセミテ渓谷とマリポサグローブのジャイアントセコイア群はその範囲に含まれず、周囲の広大な地域が指定された。
  • 1891     ヨセミテ渓谷に最初の電話線が引かれた。
  • 1892     カリフォルニア州のFish and Game委員会によりマスがヨセミテの川に放流される。
  • 1896     銃器の国立公園内への持ち込みが禁止になる。
  • 1898     最初のパークレンジャーArchie Leonardがヨセミテに着任。
  • 1900     最初の(蒸気)自動車がヨセミテにやってきた。
  • 1907     Yosemite Valley Railroadが開通。
  • 1913     自動車の乗り入れが公式に認められる。
  • 1915     John Muir Trailの建設が認可される。
  • 1916     国立公園局が創立。Washinton B.Lewisが最初のヨセミテ国立公園管理事務所長として着任。
  • 1917     最初のハイシエラキャンプ、Tuolumne Meadows Lodgeが開設。
  • 1919     ヨセミテ渓谷に最初の飛行機が着陸。
  • 1928     ヨセミテ博物館がオープン。
  • 1934     Hetch Hetchy貯水ダムの水がベイエリアに送られる。
  • 1935     Badger Passのスキー場開発。
  • 1940     Ostrander Ski Hutが冬季に営業開始。
  • 1949     ヘリコプターによる最初の人命救助活動が行われる。
  • 1951     最初の飛行機によるマス放流が行われる。
  • 1954     ヨセミテ国立公園への年間訪問客がはじめて100万人を超える。1,008,031人を記録。
  • 1958     はじめてEl Capitanの絶壁の登頂が成功。
  • 1961     WawonaにPioneer Yosemite History Centerがオープン。
  • 1966     ヨセミテ渓谷の現在のビジターセンターが竣工。
  • 1967     ヨセミテ国立公園への年間訪問客がはじめて200万人を超える。
  • 1969     Wawona Tunnel Treeとして親しまれてきたジャイアントセコイアの大木が冬季の積雪によって倒れる。
  • 1970     無料シャトルバスのシステムが開始。
  • 1974     グレイシャーポイントからのハングライダー飛行が許可される。
  • 1976     タイオガロードが4月10日に夏期のオープン。これはもっとも早い記録。
  • 1980     The Yosemite General Management Planが策定。これは公園の最初の長期計画。
  • 1983     マリポサグローブのジャイアントセコイア群での最初の火入れが行われた。
  • 1984     ヨセミテが世界遺産リストに入る。
  • 1986     California Bighorn Sheepがヨセミテに再び放たれる。
  • 1987     ヨセミテ国立公園への年間訪問客がはじめて300万人を超える。3,266,342人を記録。
  • 1990     ヨセミテ国立公園指定100周年を祝う。8月に大規模な森林火災が発生。
  • 1993     Yosemite Concession Services Corp.がYosemite Park & Curry Co.に代わって公園内の営業活動を行うようになる。
  • 1995     ヨセミテ国立公園への年間訪問客がはじめて400万人を超える。4,101,928人を記録。ヨセミテ国立公園管理事務所長として最初の女性B.J.Griffinが着任。3月に大規模な崖崩れがハッピーアイル周辺で発生。
  • 1997     新年1月1日に「百年に一度」とも呼ばれる大洪水が発生。復旧工事のため3月14日まで公園は閉鎖となった。
  • (参考:”The Complete Guidebook to Yosemite National Park” Steven P. Medley)