Stephen T. Mather

アメリカの国立公園制度は1872年のイエローストーン、あるいはそれに先立つ1864年のリンカーン大統領によるヨセミテグラントに始まる。しかし公園管理の仕組みが実質的に整っていくようになるのはそれらの半世紀もの後、1916年の国立公園局(National Park Service…NPS)の設置以降である。
NPSの初代長官のStephen Matherは自然愛好家で、しかも経営手腕に優れたビジネスマンから転進した逸材だ。
着任のきっかけは、当時Matherが訪れたセコイヤ国立公園、ヨセミテ国立公園の管理状況がひどかったこと。当時の連邦政府内務長官のFranklin LaneはMatherの友人だったので「せっかくの国立公園の管理は全くなってない、なんとかしろよ」と手紙を書いたら、 Laneから「それならきみがワシントンDCに来て国立公園の仕事をしてくれないか」と返事が来た。それでさっさと事業を整理してワシントンDCに乗り込む。
Matherは新聞記者の経験もあり政界にも通じ、ロビー活動で上・下院議員への国立公園の重要性を訴え、その管理組織としてNPSの設置を議会で認めさせたのである。
Matherの功績のひとつは国立公園へのアクセスを大衆化させたことだろう。イエローストーンにせよ、ヨセミテにせよ、凡そそんな場所は都会から離れた、ものすごい山奥にあって、1900年代に入っても馬車にゆられて何日もかかるような旅は、庶民のものではなかった。
Matherはまず大陸横断の鉄道会社と組んで、「See America First」と銘打った国立公園への旅を売り出す。そして「山小屋」レベルのものしかなかった国立公園内の宿泊施設から、プールやテニスコートなども備えるプレミアクラスのリゾートホテルの建設を行った。
また、この時代は自動車の大量生産がすすみ、マイカーが一気に庶民にまで普及し、そしてインターステイツハイウェイが整備されていく時代でもある。次にMatherは複数の国立公園をハイウェイでつなぎ、次から次へと国立公園を訪ねる旅を可能にした。行く先々でスタンプを押し、ワッペンを買い、御朱印帳のように国立公園を「収集」する楽しみはMatherによって仕掛けられたものだ。

2002年: Warren HardingとGalen Rowell

ちょうど10年前、ヨセミテに深く係わりのあったWarren Harding(6/18/1924?2/27/2002)とGalen Rowell(8/23/1940?8/11/2002)が亡くなりました。 El Capitan NoseやMt. Conness南西壁ルートの初登などで有名なHardingは2月に77歳で天寿を全う、Rowellは8月に、Bishopの空港で小型飛行機の着陸時の事故で妻のBarbaraと共に亡くなりました。写真家としての肩書きで知られるRowellですが、若いときは難しいクライミングをこなし、二人は共にザイルパーティーを組んだ親しい仲でした。写真(2006年4月)は使いまわしになりますが、二人が1968年の11月にHalf Dome南壁登攀時に雪嵐につかまり、Royal Robbinsらに救助されたときのものです。スライドを紹介しているのはRobbins本人(2006年4月の講演)。

Royal RobbinsはヘリでHalf Domeの頂上に到着。

頂上かおろされた800ft.のロープを上りきったHardingと

Rowell。

SUNSET AFTER A STORM, YOSEMITE VALLEY, CALIFORNIA; 1970

20101120
1970年10月23日、Warren HardingとDean Coldwellは、El CapitanのEarly Morning Light壁の初登をめざし、数週間分もの食料を持ち、岩壁に取り付きました。
11月に入ると秋の嵐がヨセミテを通過し、NPSは11日に彼らの救助を決定します。友人でもありクライミングパートナーでもあるRowellにも、救助に参加を要請する電話がかかり、Jim Bridwellと共にベイエリアからヨセミテへと向かいます。Crane FlatからValleyへと下っていくと、雲間からEl CapitanとHalf Domeが見え出してきました。今までに無いベストなシーンと感じたRowellは、3分ほど立ち止まり、200mm望遠で2枚の写真を撮りました。「Mountain Light」には、その写真を撮るにあたってユニークだと感じた二つの要素を述べています。
“First, the two most striking granite forms of the valley, Half Dome and El Capitan, appeared side by side , although they are actually at opposite ends of the valley. Second, each was lit with splendid, but very different, light. Together, the two factors gave the formations the separate character they have in real life, an effect that doesn’t usually come across in photos. Usually, images show the great rocks lit in similar light as part of a two-dimensional scene, thereby failing to convey the power of the landscape, which I saw coming alive. With El Capitan in red sunset light and Half Dome in blue shadow under a cloud, this image is a kind of visual archetype of the Yosemite experience.”
同じ時に同じ場所を通りかかったなら、まずほとんどの人が車を止めて撮影をすると思いますが、Rowellのようなことをどれだけの人が意識するのかは興味深いところです。 上の写真は、4冊の写真集を並べたものです。左上から時計回りに「Mountain Light」(初版1986年、これは1995年 Sierra Club Books版)、「THE YOSEMITE」(1989年、Sierra Club Books版)、「THE YOSEMITE」(2001年, YA版)、「California THE BEAUTIFUL」(2002年、Welcome Books版)です。面白いことに、年が進むにつれて、どんどん赤色が強くなって(着色されて?)きています。 さてValleyに到着したものの、救助はNPSの先走りだったため、その日に中止になります。Hardingらは順調に登り続け、11月18日に報道陣が並ぶEl Capの頂上にたどり着きました。

LAST LIGHT ON HORSETAIL FALL

20101117
Galen Rowellの、ヨセミテ写真の中で有名なものの一つに、「LAST LIGHT ON HORSETAIL FALL, YOSEMITE’s “NATURAL FIREWALL”, CALIFORNIA; 1973」があります。同氏の写真集”Mountain Light” に撮影時にまつわる裏話が書いてあります。ごく簡単にまとめると:
とある夕方、岩登りの後に友人とドライブ中、いままで見たことも聞いたことも無い現象を見かけ写真を撮ろうとしましたが、光はすでにあせてしまいました。しかし次の日の夕方、レンジャーのRiegelhuth氏(後のチーフレンジャー)を乗せてドライブしているときに、再び滝が光るのを見かけます。
”Excuse me Dick, The Light is wild on Horsetail Fall, and if you do not mind, I’m going to race over there and try to get a picture.”とRowellは話し、制限速度の2倍ほどで運転してスポットに到着、300mmのレンズのついたカメラをもって、チェーンフェンスを乗り越え、撮影場所を探します。赤い水煙の入る構図は完璧でしたが、足りないものがありました。滝を見ていたRiegelhuth氏はフェンスまで近寄ってきて「何か足りないものは?」と尋ねます。”My Tripod. It’s in the backseat.” 氏から三脚が手渡され、光が消えてしまうまでに、数枚の写真を撮ることが出来ました。
Michael Fryeによると、1940年にAnsel Adamsは、午後の光のもとで、滝の白黒写真を撮っていたようです。ですが日没時、オレンジに輝く滝をカラーで撮ったのは、Rowellが最初だと書いています。

Mountain Light


Mountain Lightのgalleryに立ち寄り、だめ元で尋ねたところ、「個々に写真を撮らなければ、撮影はOK」とのことでした。右手前の大きい写真はRowellが有名にしたHorsetail Fall(El. Capitanの西側)の限定版。確か$4600位の値段がついていました。

Rowellが使っていた道具や、関連新聞記事なども置いてあります。

シェルトン・ジョンソン氏が「National Freeman Tilden Award」を受賞

National Association for Interpretation(NAI;インタープリテーション協会)が優秀なインタープリターに授与する賞「National Freeman Tilden Award」をヨセミテ国立公園レンジャーのShelton Johnsonが受賞しました。
詳細WEBサイト↓
http://www.nps.gov/yose/parknews/shelton-tilden.htm
ジョンソン氏はNPS(国立公園局)には数少ないアフリカ系のレンジャーです。
未だ、国立公園の管理システムが未整備だった(NPSが未だ存在しない)1903年に、ヨセミテ国立公園の警備、整備に派遣された「Buffalo Soldiers」という、陸軍黒人部隊の歴史に光をあてて、新プログラムを開発しました。いまやヨセミテでは名物プログラム+名物レンジャーになっています。
この秋にアメリカPBSが制作した12時間の長編テレビ番組「THE NATIONAL PARKS America’s Best Idea」にも各エピソードにジョンソン氏が登場して、現場で活動するレンジャーとしての発言をしています。
http://www.pbs.org/nationalparks/
なお「Buffalo Soldiers」はこの番組の未放映エピソードとして、WEBからも閲覧することができます。(ジョンソン氏のインタープリテーションの様子が見られます。)
http://www.pbs.org/nationalparks/watch-video/#858

ultrarunner : Catra Corbett

Popov氏のJMT挑戦の記事を書きましたが、実は少しわけがあります。私事になりますが、先週末地元の公園でトレイルランニングをする3人に出会いました。立ち話となり、なんとなくJMT挑戦の話となり、Popov氏のことを教えられて記事に到りました。さて、そのうちの一人は女性でCatraと自己紹介されました。当人もJMTでの記録を保持しているとのこでした。山の中ではかなり目立つ容姿の女性です。今週末はハーフドームを走りに行くとのことでしたので、トレイルランナーをみかけたら要注意です。
このリンクによると以下のようです。
彼女のにヨーヨー(ヨセミテからWhitneyへの往復)記録は驚きものです。
Current unsupported JMT hiking record: (noresupply allowed)
2007 – Michael Popov – 4 days 5 hrs and 25 minutes at age 29
2005 – Jackie Florine 6 days, 6 hours, 23 minutes.
2004 – Reinhold Metzger, 62, Point Loma, backpacked the 211-mile John Muir Trail from Mt. Whitney to Yosemite National Park’s Happy Isles in five days, 7 hours, 45 min
2004 – Catra Corbett (dirt diva) 5 days, 15 hours, 50 minutes
2003 – Reinhold Metzger, 61, Point Loma, backpacked the 211-mile John Muir Trail from Mt. Whitney to Yosemite National Park’s Happy Isles in five days, 10 hours .
Yoyo Record:
2004 – Catra Corbett (dirt diva) in yoyoed – one way 5 days, 15 hours, and 50 minutes. Her yo yo time was 12 days, 4 hours, and 58 minutes. She did a resupply at the midpoint.
Current supported JMT hiking record:
2007 Sue Johnston age 41 in 3 days 15 hours 32minutes August
2004 Kevin Sawchuck in 93 hours and 5 minutes
2003 Brian Robinson……….4 days……7hrs…2 minutes
2003 Peter Barkwin ………..3 days…22 hrs…4 minutes
Catra Corbett, Fremont
I am 42 years old. I have been running since 1996 and running ultramarathons since 1998. I have run over 200 ultras, 51 of them 100-milers. I hold the women’s speed record on the John Muir Trail, 212 miles from Yosemite Valley to Mt. Whitney in 5 days, 15 hours and 50 minutes. I also hold the overall yo-yo record on the Muir Trail, 424 miles in 12 days, 4 hours and 57 minutes. In 2002, I ran the Marathon Des Sables in Morocco, a six-day 151-mile race through the Sahara Desert. The runners have to carry a 20-pound pack with all your gear. I was the 19th woman overall and second American woman. Also in 2002, I completed a solo 100-mile run through Yosemite with a nine-pitch rock climb called Nutcracker at mile 57 with my then-husband and noted climber Ammon McNeely. For more info, visit my website: www.trailgirl.blogspot.com.
引用先

JMT Record Attempt (by Michael Popov)

2006年秋にAL ShaverによるJMTスピードハイクのことを書きましたが、その一年後記録が大きく書き換えられていたようです(26時間短縮)。
2007年7月末、Michael PopovとAaron Sorensenの両氏は、ビヤ樽までも持って
Mt. Whitney中腹のWhitney Trail campへと登り、そこで数日間の高度順化をしました。
そして7月30日正午、Whitneyの頂上からYosemite ValleyのHappy Isleを目指し、全長211マイルのJMTハイクを開始しました。二人は競争をするように進み、当然ペースは上がります。しかしSerensen氏は途中でリタイア、Popov氏は101時間25分(4日と5時間25分!)後、Happy Isleに到着しました。
これは二人の記録。ヨセミテの横断(Lyell Canyonの最奥-Tuolumne Meadows-Cathedral Path-Little Yosemite Valley-Happy Isle)には10?11時間程度をかけています。最後のJMTのジグザグのくだりの苦労は涙ものです。 Half Domeを上った帰りに、同じような経験をされた方もいるかも。
これはYoutubeにUPされたの記録証明用(?)ビデオ。
出発点のMt. Whitney頂上
終点のHappy Isle

チウラ・オバタ展、今週末で終了

6月からヨセミテ・ミュージアムで開催されてきたチウラ・オバタ展が今週末で終了します。
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Reminder!!! Last chance to enjoy Chiura Obata, Art of Yosemite in the Yosemite Museum. The exhibit is up through
October 21, 2007. This exhibit explores the work of the artists Chiura Obata (1885 – 1975) who first visited Yosemite in
1927, producing watercolors that led to a series of prints made by master woodblock artists in Japan. The show
extensively covers his earliest visits during 1927-1930, but includes works produced up to 1958. This exhibit displays
over 30 woodblock prints, sumi and watercolor paintings, sketches, a well as his actual paints, brushes, and artifacts. (M.
Luchans – 10/18/07)